本堂

昭和二十年三月十二日の名古屋大空襲により、大須地域一円が焦土と化し当寺もその運命を共にしました。
戦後の復興期に、稲荷殿・不動殿寺を新築(再築・再建)しましたが、本堂の再建は遅れ、始まったのは平成四年五月から。
境内地を開放しての商店街、住宅地帯を新設するという、民衆とともにある萬松寺覚典和尚の意思に立脚し、新しい時代の要請として、近隣商店街も耐火・高層建築に変貌するであろうと推量されるため、周囲の都市景観とマッチした構造(地下一階、地上五階建て鉄骨鉄筋コンクリート造り)の本堂が建立されました。

織田信長と万松寺

織田家の菩提寺として織田信長の父、織田信秀によって建立された万松寺は、信長との関係も深く、数々の逸話が残されています。
その中でも有名なのは「抹香事件」です。天文二十年(1549年)、信秀は流行病によって四十二歳で亡くなり、万松寺で葬儀が執り行われました。葬儀は700名もの人々が参列し、300名を超える僧侶の読経の中で厳粛に行われていましたが、そこに喪主である信長の姿はありませんでした。
葬儀も半ばを過ぎた頃に、ようやく信長が現れました。しかしその姿は、髪は茶筅巻き、腰には荒縄の帯と長束の太刀を下げた、葬儀の席に全くふさわしくない格好でした。そして信長はいきなり抹香を手づかみにすると信秀の位牌に投げつけ、そのまま立ち去ってしまいました。
この葬儀での振る舞いが信長は「うつけ者」であるという噂を世に広くしらしめたといわれています。
葬儀における粗暴な行動について、信長の真意は明らかではありませんが、家督を争っていた弟の信行陣営や敵対する隣国大名などに信長は「うつけ者」と信じ込ませて油断させるための計算された行動であったという説があります。現にその後、信長は家中の混乱を収め、隣国の斉藤家(美濃)や今川家(駿河)を知略によって攻略し、天下布武への道を歩み始めました。
万松寺では、信長が信秀の位牌に抹香を投げつける場面を本堂外壁の「からくり人形」で再現しています。

本堂

本堂は八間の間口があり、空調、床暖房も完備された快適な空間です。
御祈祷や供養、大規模な法要や催事などにも利用されます。

本堂には、本尊『十一面観世音菩薩』が祀られています。

十一面観世音菩薩

11の顔で全方位を見守り、衆生六道に生きる全てのものを救う観音様

十一面観世音菩薩は、本来の顔以外に11の顔を頭部にもつ観世音菩薩の変化身です。梵名は「エガーダシャムクハ(ekadasamukha)」といい、意味はそのまま”11の顔を持つ者”となります。11の頭部面のうち最も高い場所にある顔は「仏面(ぶつめん)といい、教えを説く仏の顔を表しています。また前面にある3つの顔は「菩薩麺(ぼさつめん)」といい、人々の慈悲を示し善良な衆生に楽を施しています。左側にある3つの顔は、「瞋怒面(しんぬめん)」といい、悪行に対する怒りを表し邪悪な衆生を戒めています。右側にある3つの顔は「狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)」といい、清らかな行いをする衆生を見て牙をむき出して喜んでいます。そして、うしろの顔は「大笑面(たいしょうめん)」といい、悪にまみれた衆生を笑い飛ばし改心を促しています。この様に十一面観音世菩薩は、厄除けや身体健全などのご利益「十種の勝利」と死後も地獄に落ちずに極楽浄土に行ける「四種の果報」があるとされ、千手観世音菩薩と並び人気が高い観音様です。

十種の勝利
  1. 病気をしない
  2. 全ての如来に受け入れられて護られる
  3. お金や食料に不自由しない
  4. 敵から害を受けない
  5. 人々に慕われる
  6. 害虫に刺されない 熱病にならない
  7. 凶器による害を受けない
  8. 大災に遭わない
  9. 水難に遭わない
  10. 不慮の事故で命を落とさない
四種の果報
  1. 臨終時に仏に会える
  2. 地獄に落ちない
  3. 早死しない
  4. 今生の後に極楽浄土に生まれ変わる

【本尊 十一面観世音菩薩の御利益】

家内安全 身体健全 災難消除 無病息災 病気平癒 交通安全 開運成就 安産成就 良縁成就 学業増進 心願成就 厄難消除

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万松寺本堂

Web拝観

二階

開山堂兼位碑堂及び書院

二階は通常開山堂・位牌堂となっていますが、位牌段の襖を閉め、各間の仕切りを取れば七十畳余の大広間となり、二百人以上を収納できる空間となります。
マイク、音響設備等も完備され、葬儀の控え室から法事のお斎などや、講演会やイベント等など地域内外の皆様にご利用いただけます。

三〜五階/地下一階

納骨堂

天候にかかわらずお参りができる屋内施設の納骨堂です。
僧侶が毎日各納骨堂で朝夕お経を読み、故人様への祈りを届けます。また毎年、お正月・お彼岸・お盆法会などの手厚い供養や、心の繋がりを深めていただくためご縁の深かった方々を招いての「回忌法要」、1年に1度の大切な故人様との時間をお過ごしいただくための「迎え火・送り火」、自身の心が安らぎ、元気をもらえる「墓前供養」など供養のすべてを手厚く行っております。

三階/水晶殿(すいしょうでん)

水晶の輝きに浄化される幻想的な場所

三階/氣昇閣(きしょうかく)

天地をつなぎ「氣」を連綿とつむぐ場所

氣昇閣

四階/瑞雲閣(ずいうんかく)

五階/天聚閣(てんしゅかく)

天に近く想いが聚まる場所

地下一階/逢恩閣

祖の恩を知り想う心に出逢う場所

屋上

鐘楼堂

屋上は鐘楼堂になっており、大晦日の除夜法会では、皆様に鐘を撞いていただいています。

大晦日の深夜に聞こえる除夜の鐘。

除夜の鐘の「除」という言葉には「古いものを捨てて新しいものを迎える」という意味があります。すなわち「除夜の鐘」は大晦日の夜に鐘を撞いて1年間の煩悩や穢(けが)れを払い、清らかな心で新年を迎えるための鐘として、全国の寺院に広まったと言われています。
また、除夜の鐘を撞く回数は108回と決まりがあります。108回という数の由来には諸説ありますが、仏教では人間の煩悩の数を表しているという説が一番有力とされています。

煩悩の数
煩悩は、6つの感覚器官(六根(ろっこん))からもたらされています。
六根とは、

  1. 眼(げん:視覚)
  2. 耳(に:聴覚)
  3. 鼻(び:嗅覚)
  4. 舌(ぜつ:味覚)
  5. 身(しん:触覚)
  6. 意(い:意識、第六感)

の感覚器官を指します。六根のそれぞれには、

  1. 好(こう:気持ちが良い)
  2. 悪(あく:気持ちが悪い)
  3. 平(へい:どちらでもない)

の状態があって6×3=18種。この18種それぞれに

  1. 浄(じょう:きれい)
  2. 染(せん:きたない)

の状態があって18×2=36種。この36種の状態が、

  1. 前世
  2. 今世
  3. 来世

のそれぞれに存在し、36×3=108種が煩悩の数となります。

万松寺では、大晦日の22時から「除夜法会」(じょやほうえ)を開催し、ご参加いただいた方に万松寺の鐘をおつきいただきます。